それでも愛してる

病なんかぽぽいのぽい 音楽聴いて穏やかに生きていこ  毎日が冒険の日々ー

愛、ころころころがる

 

電車、出発のベルが鳴る。
果てなく遠いとこに
コイツはまた帰っていく。

笑いながらコイツは言うんだ。

「空は繋がってるよ」

誰でも言いそうなこと言ってさ。
涙は不思議と出ない。
キミは私に百均で買ってくれた黒いふかふか手袋を包み込んでる。
自分のぶんも買えばいいのにへんなとこでカッコつけてさ。

「愛してる」

「え」

ドアが閉まった。
ドアのガラス越しに笑いながらこっちに手をふってる。
「何でそれだけで行くのよ!ちょっと!」
ドアを叩くと同時に電車は発車する。
ホームのトタン屋根の隙間からオレンジ色が叫ぶ叫ぶ叫ぶ
『ばかやろう!次の電車で追いかけろ!一生後悔するぞ!』
も、もう遅いよ
オレンジ色が叫ぶ叫ぶ
『ばかやろうが!次の電車飛び乗って次の駅で降りろ!!!』
声が出ない
意味がわからない
思考が回転しなくなってくる
足の震えが止まらない
錯乱発作の病が噴き出てくる

 

 

びょういんにもどらないと

 

 

刃を磨いだかのような稲妻が襲いかかる
戦慄の恐怖は一切の音源を砕け飛ばした

座りこんだ

『女ぁ!!!薬持ってきてんだろうが!すぐ飲め!!』

オレンジ色は恐怖稲妻を一刀両断するかのように叫びかかってきた

み、水がない

『噛み砕け!!!!!』

息ができなくなってくる
ホームに次の電車が入ってくる
ドロンと景色が歪んだ
発作で入院したら本当にもう会えなくなる
愛してる愛してる愛してる

でも
でも 私より健康な人がいいのかな
大粒の
凄まじい大量の涙がふきだした
涙と嗚咽と鼻水と愛
愛?
愛 いかないで
いかないでください
何でもしますから


神風
突風、嵐の如く
吹き暴れ参上


突風で破れたトタンの隙間から
千手観音後光をも切り刻むオレンジ色が放った
ぐしゃぐしゃの顔で必死に周りを見た
ホーム中がまるで太陽なるオレンジだった

『立たんかい!!』

ぐしゃぐしゃと服で顔をふいて怒鳴り返した

言われなくてもわかってるわよ!!!

バックをひっくり返しこぼれ出た錠剤を口に押し込み
おもいっきり噛み砕き
斜めに走りながら電車に飛び込んだ
ドアが閉まる
錠剤まみれの口で叫んだ

「命令すんな!!ばか!!ありがとお!!」

ドアが閉まってしまう瞬間、微かに確かに聞こえた

『てめえらで何組目だよ ばかやろう』

 

閉まった。
連結部分で座りこんだ。
何かでごまかそうと音楽を聴いた。
嫌味な歌が流れた。
唯一、救いなのは
「八田ケンヂ」だったこと
聴きながら鼻水たらしながら
また号泣した。


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ああ、だから今夜だけは
君を抱いていたい
明日の今頃は
僕は汽車の中
いつもいつの時でも
僕は忘れはしない
愛に終わりがあって
心の旅がはじまる

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不思議なオレンジ色

神風

パキシル

八田 ケンヂ

線路のような手首

 

何だったのかわからない。
わからないけれど
一瞬だけ
ほんの一瞬だけ

 

博多駅ホームは神風、吹き荒れ
太陽でいっぱいになった。

 

よくあるドラマ。
次の駅で実は彼が電車から降りて再会するってオチ。
ばかばかしい。
ふんってしてやった。
鼻水が出た。

 


次の駅まで1時間ちょい。
何か
何かさぁ
何かドラマっぽくならなかったらどうしてくれんのよ。
口、苦いし。
大体、一年ぶりに会って
プレゼントが百均てなによ。
こんなんなら
こんなんならさ
歌詞みたいにさ

 

ポケットに入れて
そのまま連れ去ってよ

 

障害者手帳をぼーっと眺めながら
アイツも二級だったなあとか思った。
精神科病棟の遠距離恋愛ってありえんのかなあ

手帳を半分に破った
立ち上がった
立ち上がって
腹の底から声をだした

 

 

 

 

 

「絶対 愛してる 負けない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


『よう、アイツらどうよ』
「私は神風などではない」
『てめえの事なんか聞いてねえよ』
「久しく見ぬ、強き伴侶と」
『来年、ここのホームもなくなるな』
「それも一興」
『一興かよ、そうかよ、まあさ』
「ん?」


『一カップルくらい孫見せにこいよなあ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


愛っていくらですか
お金払うんで
売ってください

                   4/10 なる子 〆