それでも愛してる

病なんかぽぽいのぽい 音楽聴いて穏やかに生きていこ  毎日が冒険の日々ー

嫌子屋の宝物

『おねーちゃん達が駆け抜けた時代』

 

 

 

 

 

いますか。

 

 

「優しさ」

 

とてもとても難しいものだよね。

だから、

あたしはいつも

 

「こんなん言うたらこう思うかな」

「何でこの人こう言うんやろ。何か伝えたい事があるんちゃうんかな」

「困ってへんかな。でもおせっかい思われるかな」

「あたしでええならそれでええねん」

「あたしやったら何てされたら嬉しいやろか」

 

そんな事ばっか考えたりやったりして、その結果

「卑屈」

「やさしぶってる」

「自分でかわいいて思ってるな」

「うざい」

「ぱしり」

結局、そんな感じ。

いじめられたりして勝手に傷付いてめそめそばっかしてた。

いつしか人と会話するのが怖くなってただ、へらへら笑うだけになった。

猜疑心の塊って言うか、ようは嫌われる事を極端に恐れるようになった。

学校のみんなのグループもどこに定着するでもなく

「顔色をうかがって生きてる」

だっさい生き方だった。

前に書いた「けんこや」だけがあたしの安息の場所だった。

一歩、外に出たら何かに怯えて、挙動不審で

けっして大袈裟じゃなくオドオドビクビクで

優しくしてくれるゆうきにくっついてるばかりの、ただのブサイクな女子だった。

 

「ゆうき、何でその、何でみんなといっぱい仲ええの?」

「どゆこと?」

「あの、だって、と、友達ゆうき、いっぱいおるやん」

「友達?どこに」

「え?あの、学校。クラスとか。なんか違うクラスの子も」

「あいつら?」

「う、うん」

「ゆうこ、友達って辞書で調べたことある?」

「ううん。一緒に遊んだりして友達やん」

「ゆうこ、あたしの友達やんね」

「うんうん」

「ゆうこが笑ったら嬉しいけ、あたし笑わかせよていっつも思う(笑)」

「あははは あたしもそれ思う」

「ゆうこがどんなん考えとうかなあとか、よう思うんよ?」

「あ!あたしもそれそう。クラスの子の事とかいっつもそんな思うで」

「思わんでいいよ」

「え?何で。あたしら友達やん」

「違うて。アイツらの事を言いようとよ。人が見えんとこで悪口ばっか言うやん」

「。。。うん。悲しいよね」

「ゆうこが悲しいのは悲しい(笑)」

「うん。。(笑)」

「ゆうこ、あたしの悪口言わんやろ」

「言うわけないやん!ほんとよ?あたし言わんよ??」

「わかっとうよ(笑)あたしもゆうこの悪口とか死んでも言わんし」

「うんうんうん」

「だけん何も悲しまんでいいとよ。友達からは悲しいけど、アイツらとかいいんよ」

「ゆうき、強いから。あたし落ち込んでしまうねん」

「ゆうこ優しいもんね(笑)あたし別に強くないよ」

「強いよ!男子にもめっちゃ言い返すやん」

「うーん」

「グループん中、入れてもらうのもどきどきするよ(笑)」

「そんなん入らんでいい!!!」

「ご、ごめん!。。」

「怒ってない怒ってない(笑)」

「うん。。」

「ゆうこ、人の悪口とか言うずるいヤツラとかと友達なりたいん?」

「ううん。ただグループ行くとこなかったら友達おらんて思われそうやから。。」

「あたし友達やろ?」

「あたりまえやん!」

「ゆうこ、うけるなあ(笑)」

「何でやねんな!あははは」

「ゆうこ」

「うん?」

「クラスでひとりぼっち、なるん恥ずかしい?」

「。。うん」

「ゆうこー」

「うん?」

「明日から毎日、休憩時間ゆうこんクラスに遊びいくけん」

「えええ!」

「いや?」

「い、いややないけど、違うクラst

「決まり!何か言うてきたら黙らすけ。何も恥ずかしくない!わはははは!」

 

小学2年生の時のけんこやの前の木のぼろい長ベンチでの思い出。

こんなのドラマでしかみんな見た事ないだろうし信じる人もいない。

そんなの死ぬほどどうでもいいけど。

って、そんな事を言えるようになったんだな。

 

次の日から5年生に上がるまで、ゆうきは本当に毎日あたしのクラスに遊びに来た。

自由帳に一緒に絵を描いたり、当時流行ってたシールを見せあったりして遊んだ。

ゆうきが自分のクラスに帰った後がいつも怖いと言うか恥ずかしかった。

おちょくってきた男子にでっかい声で言い返して、あたしがオドオドしたりしてた。

女子がコソコソ何か言ってるのは感じてたけど、

なるべく気にしないようにがんばった。

気付くとあたしはいつのまにか、誰からもいじめられなくなっていた。

それはゆうきだけのおかげだけじゃなくて、あいつも面白がってあたしのクラスにちょこちょこ来るようになったせいもあった。

 

5年、6年はゆうきと念願の同じクラスになった。

2人できゃあきゃあ言ったのをよく覚えてる。

そして、あいつも一緒だった。

先生は人生最大のクラス替えミスを犯したと思う。

案の定、あいつとゆうきはしょっちゅう口喧嘩三昧だった。

だけど毎日が楽しくて楽しくてしかたがなかった。

 

クラスであいつは孤立してた。

気にしてる様子ではなかったけど、ただ気になって仕方がなかった。

給食時間は6人編成で机をくっつけてグループで食べるのに、

あいつは机を動かす事もなく、もくもくと独りで給食を食べていた。

ゆうきにあいつのそういうところを言った事もあったけど、

ふんって笑って「気にせんでいいて」と言うだけだった。

昼の長休みは机にうっつぶして寝てるか、

不気味に運動場の端っこに座って遊んでるみんなをぼーっと見ていたり、

飼育小屋の前に座ってにわとりをじーっと見ているところを目撃した事もあった。

けんこやでは、ふざけあって遊んでる仲いい友達とも、

学校時間じゃそのけんこや友達と何故かつるんでなかったのがとても不思議だった。

未だにその事は聞いてないし、もう聞こうとも思わない。

 

卒業式。

ゆうきは人目も気にせず顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

あいつは国歌斉唱の時にちょこちょっとした問題の、

起立しない先生に、よせばいいのにわざわざ何か言ってて講堂が少しざわついた。

そのあとヒソヒソ声が聞こえた。

あいつは昔から日本史みたいなのとか、

戦闘機の本とかをよく読んでいた。

今でもそれは変わってないけど。

 

 

 

「優しさ」

 

とてもとても難しいよ。

けどさ、

ほんのちょっと。

本当にほんのちょっとだけ、

いつもいつも与えてもらってばかりだったあたしが、

自分じゃない人に、こちょっとプレゼントできるようになったような、

そんな気が、

ちょこーっとするような気がしないでもないような気がしないようでもない。

 

孤立してる友達のクラスに遊びにいってあげるような子っているのかな。

いるって信じたいな。

遠い昔、一人だけいたのをあたしは知ってるから。

ゆとりとか、軟弱とか色々言われてる日本の子供達は、

大人が言うほど曲がってなくて、

きらきらしてるように見えるのはあたしだけかなあ。

 

 

小学2年の、とある図書室の時間。

国語辞典の中に書いてあった宝物。

 

 

 

 

 

ともだち 『友達』

ー気持ちの通い合ってる人ー

ー同志ー